今の職人は、学歴がなくてはいけません。
最低でも、そですね、理系の大学を卒業していてください。
そうでなければ雇えません。
そんな風に言われて職人を目指す人はピンとくるでしょうか?
職人と理系大学。結びつきますか?
でも歯科医療機器の職人になるには
学歴が必要になってしまいました。
(職種によりますけど、当社ではそうなってしまいました)。
さて、曲線のある超音波チップが歪んでしまったり
ガタガタになってしまったりする理由の一つは、
機械でためようとするからです。
しかし、これにはもうひとつ理由があります。
機械でためても一本一本見て、
手直しをすれば、ちゃんとした形になります。
ただ、この手直しもまた、ためる以上に
熟練を要します。
ちょっと直す。
このちょっとが難しい。
このちょっとができるのが職人です。
そう、職人がいないのです。
先端の曲げ加工は、私たちのような歯科医療機器の中でも、
小物いいますか、手用で使うもの、例えばプローブだったり、
スケーラーだったり、キュレットだったり、こういったものを
鋼製小物と呼びますが、この鋼製小物を製造する職人でなければ
うまくいきません。
その職人がいなくなってきています。
私は、現在39歳ですが、歯科器具の販売、製造する
職人で一番若いのではないでしょうか。
いなくっていく理由はいくつもありますが、
一つは、法律です。
そう理系でなければいけなくなっています。
国はモノづくりをする人を大切にしなければいけないと言いつつ、
私たち職人がやめていかなければならない法律をつくります。
以前、お話ししましたように私たち職人が歯医者さんに
歯科医療機器・歯科医療器具を販売する場合、
「医療機器製造業 許可」
「医療機器製造販売業 許可」
「医療機販売業 許可」
の三つを取得しなければなりません。
複雑ですよね。しかもこうして並べるとみんな一緒に見えませんか?
この中で一番取得が困難なのが「医療機器製造販売業 許可」です。
国の位置づけとしては、販売の責任をこの医療機器製造販売業が
負うということにしています。
この許可を受けるためには、
社内に品質管理責任者と安全管理責任者を置き、
さらにその二つの役職を管理する「総括製造販売責任者」を
置かなければならないとしています。
ここで私たちの首を絞めるのが、
「総括製造販売責任者」になるための資格要件です。
大卒または高専卒で
電気、機械、金属、化学、物理、化学、薬学、 医学、歯学のうち、
いずれかの専門課程修了者。
この法律は平成17年にできたのですが、
私は、とうに大学を卒業していますので、
この要件を満たしていません。
現在は、社長がもうひとつの要件で、
この総括になっていますが、
社長がやめると私たちは、
歯医者さんに販売することができなくなります。
今後も歯科医療機器販売をつづけていくためにも
現在、正社員を募集していますが、
上記の要件のためこれまでどれだけの人を断ったかわかりません。
上記の要件の件で、管轄の東京都にも何度も電話していますし、
厚生労働省にも電話しました。
厚生労働省では「こういったお電話があったことは記録しておきます」
とだけ言われておしまいです。
また、東京都でも「夜間の大学に通われてはどうですか」
と平気で言います。
確かに夜間に通うことができる人もいるかもしれないが、
できる一部の人をあげて、こうしている方もいますから
あなたもするべきだのようなニュアンスで言われると
中小企業の実態を理解しているのか!
どれだけぎりぎりでやっていっているのかわかっているのか!
と言いたくなります。
そして、日本のモノづくりを支えているのは、我々職人です。
歯科資料機器の超音波チップで世界と戦える
日本のメーカーがうち以外にあるでしょうか。
うちが日本の超音波チップを支えているのです。と自負しています。
また、他の歯科医療機器の職人さんでも
この法律のためにやめていく方も多いと聞いています。
国は、日本に我々職人がいなくなれば、
歯科使用機器の販売で世界の食い物になるのがわからないのでしょうか。
そしてそれは、値段などでも言いなりになるしかないということなのです。
ゆくゆくは困るのは歯医者さんであり、患者さんなのです。
現にさきほどあげた鋼製小物は、
ほとんどが輸入になってしまっています。
このままでは、職人はいなくなります。
せめて職人がやめなければならない法律は変えてください。
職人に高学歴はいりません!
考える力は必要ですけど。
せっかく一件一件審査しているのですから、
その一件一件をしっかり見て、そこに何が必要か
何でも杓子定規にやるのではなく、
その会社が製造している内容をよく見て、
それにあった要求をしてください。