歯科器具(キュレット・スケーラー)のシャープニング方法

私たちは2007年の冬から超音波チップの直販をはじめました。その頃から、先生や衛生士さんと直接話す機会が増えました。
その中で、話題に多くのぼるのが
歯科器具、スケーラーやキュレットのシャープニング方法
です。
キュレットやスケーラーのシャープニングが難しいと言われます。ある有名衛生士さんとお話ししたときも
「今のシャープニング方法は、無理があるような気が
するんですよね。ちゃんとシャープニングできている
感じがしないです。そもそも刃がついているか
見分けるのが難しい」
と仰ってました。
私たちがこういう話を聞きますと「そうだろうな・・・・」と頷いてしまいます。
理由は2つです。
職人が10年かけて習得する技術「シャープニング」
私ども錦部製作所は創業してから90年、外科用器具をはじめ、歯科用のキュレットやスケーラーなどの医療器具を製造してきました。当然、先生や衛生士さんがいうところのシャープニング、私たちがいう「研ぎ」もこの間、ずっとやってきました。
キュレットやスケーラーのシャープニングが難しいと私たちが聞き、思わずうなずいてしまう理由の一つは、
ハンドスケーラーや超音波スケーラー用チップの「研ぎなおし」は本来、私たち職人が10年以上かけて習得できる技術だからです。
これは刀をつくるときもそうですが研ぎは最後に教わります。
それほど難しい工程なのです。
そしてもう一つは・・・・ちょっと再現ドラマ風に。
衝撃的事実
その衛生士さんは片手にシャープニングストーンを持ち、片手にキュレットを持ち、胸の前でこすり合わせるようにしていました。
10年前 かかりつけの歯科医院
治療が終わりチェアーで院長と談笑していたときのことです。
ふと、先生の後方にいた衛生士さんに目を向けました。
衛生士さんがキュレットらしき器具をシャープニングしている。
「いつもあーやって研いでいるんですか?」 と私は恐る恐る聞きました。
「そうだよ」 と先生があっさり。
あの時、私は驚きでしばらく次の言葉が出ませんでした。
そして、「あーあれじゃ、一生かかっても研げるようにならない」 と思わずつぶやいてしまいました。
そして、その時、この方法を学校で習い、国家試験にもでることを聞きました。
(またも驚きで言葉を失ってしまいました。)
そして、多くの先生や衛生士さんは、このようにシャープニングしているとその時に知りました。
もう少し詳しくお話しします。
そもそもシャープニングって何?
シャープニングとは簡単に言いますと、切れ味が落ちた刃物を元の切れ味に戻すことです。しかし、その「刃がどんなものか分からない」という質問がけっこうきます。
「ただ、角ばっているだけでは刃ではないですよね?」
という質問もあります。
なぜか、
刃はただ角ばっているだけではない
と考える方がおられますが、
角がしっかりと角ばっていていれば、
それは刃です。

この先端を正面から見ますと

歯石除去などにスケーラーやキュレットなどを使用しますと、赤い丸で囲った部分のように角が少しずつとれて、丸まっていきます。
角が丸まると歯石などにひっかからなくなり、すべるような感覚となり、切れ味が落ちたということになります。
シャープニングとは赤線のように、その丸まった部分を削って、元のように角ばらせることをいいます。
職人しか教えられないシャープニングの基礎
シャープニングをする際に大事なことが3つあります。この3つどれが欠けても、ちゃんとしたシャープニングができません。
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1 シャープニングしたい歯科器具、もしくは
シャープニングする道具(シャープニングストーンなど)を
手で握るだけではなく、何かにしっかり動かないように固定すること。
2 目でシャープニングしている面を見ながらシャープニングすること
3 シャープニングする道具(シャープニングストーンなど)を
小さく1センチか2センチ程度動かしてシャープニングすること
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どうですか?
あなたが今やっているシャープニングを頭に思い浮かべてみて、この3つができていますか?
逆に言いますと、
==================================================
1 シャープニングしたい歯科器具、もしくは
シャープニングする道具(シャープニングストーンなど)が
何かにしっかり固定されてない
2 目で確認しながらシャープニングができない
3 シャープニングする道具(シャープニングストーンなど)を
大きく5センチも10センチも 動かさなければならない
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このようなシャープニングですと、きちんとシャープニングできないということになります。
これをシャープニングストーンでの
シャープニングと照らし合わせてみます
1 シャープニングしたい歯科器具、もしくはシャープニングストーンが固定できるか?
シャープニングストーンでのシャープニングは
空中でシャープニングします。すると、
砥石と歯科器具が両方とも固定されていない状況です
のでシャープニングストーンが器具に当たった瞬間に
器具が逃げます。

↓ ↓ ↓

また、肘をテーブルなどについて腕を固定し、シャープニングストーンをキュレットから離さないで何度も動かすシャープニング方法でも一緒です。
歯科器具やシャープニングストーンが何かに固定されて
いなければ、押しただけで動いてしまいます。
2 シャープニングしている部分が見えるか?
このシャープニングの仕方ですとキュレットなどのブレードの側面をシャープニングしているのに、その側面の部分が見えません。
当たっているところが見えないということは、つまり勘でシャープニングしているということになります。
3 大きく動かさなければならないか?
この方法はシャープニングストーンを大きく動かします。
大きく動かして何度も何度もシャープニングする面に添って、同じように削るには私たちでもかなりの修業が必要です。


これは刃を壊しているということです。
丸まりがどんどんきつくなり、最終的には刃がつかなくなります。
ちょっと衝撃的なことを言います。
回りくどく言うよりもズバッと言います。
ちょっと言いにくいですが。
私たち研ぎに関わる人間から見ますと、これはハサミ職人でも 包丁職人でも誰から見てもそうですが、
この胸の前で片手にシャープニングストーン、
片手に歯科器具のシャープニング方法では、
きちんとシャープニングできません。

一つの疑問

しかし、セミナーで教えている方はなぜ、側面をシャープニングする方法を教えるのでしょうか?
これまで販売されてきたシャープニング器具や道具は、なぜ、側面をシャープニングするものばかりなのでしょうか?
シャープニングとは私たち職人が10年かけて習得する技術です。
ですから難しい作業なのですが、側面をシャープニングするというのは、その中でも特に難しい技術なのです。
歯科業界に必要なシャープニング方法

前出の衛生士さんに
ぜひ、シャープニングが簡単にできる
器具を作ってくださいと頼まれました。
私どももあの10年前の光景からからずっと考えていました。
そして、何度となく試作を繰り返してきました。
「研ぎなおし」は、できれば我々に依頼していただくのが一番です。
ただ「研ぎなおし」はマメにやらなければいけないので、常に弊社に依頼する方法はあまり現実的ではないようです。

直販している超音波チップでは、「一回目は研ぎ直しを無料でします」としていますが、なかなか研ぎ直しには帰ってきません。
新しいのを購入していただけるので、私たちにとりましては悪いことではないのですが、できればいい状態で長く使っていただく方が嬉しいです。
そうです。
この研ぎなおしの仕方が良ければ、
常に良い状態で
スケーラーやキュレット、刃のついた超音波チップ
を使う事が出来るため、
患者さんにとっても 先生や衛生士さんにとっても
良いことです。

ですので、ずっと悩んでいました。
「誰でも簡単に研ぎなおしができる方法は無いかと。。。」
さらに3年ほど前からは頭からアイデアをひねり出すよう悩んでいたのです。

そしてある案が浮かびました。
そしてそこから研究開発を続け、ついにその案が形になりました。
超音波チップ専門メーカーであり、研ぎなおしのプロでもある弊社だからつくれた製品です。
これを使えば、歯科器具を固定し、削れているところを目で見ながら、手を大きく動かさないで数ミリ動かせばシャープニングできます。

そして、誰でも簡単に少し練習すればできるようになります。
私どものパートさんに初めてこの製品を触らせて教えますとだいたい15分くらいでできるようになりました。
しかも子供のころからこの仕事をしている私と変わらない仕上がりです。
そして、この製品のポイントは今までシャープニングしていた部分ではない、ある部分をシャープニングするところです。
ではどこをシャープニングするでしょうか?
それはまた後日。
追伸 この製品は2010年8月20日に販売となりました。
商品名は「なでるDAKE」です。
なでるだけでシャープニングが完成すると言う
これまでにない製品です。
世界初!シャープニング専用超音波チップ「なでるDAKE」詳細ページ
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